矢掛石(やかげいし)

◆ 採掘地・丁場

岡山県小田郡矢掛町

◆ 主な特徴

岡山県小田郡矢掛町で採れる白系花崗岩。墓石・外柵材等として地元を中心に広島・岡山等で使用されています。「白桜みかげ」とも呼ばれ、穏やかな石目も特徴です。

◆ 矢掛石の有名な使用例

矢掛石の岩質データ

分類:花崗岩

吸水率:―

硬度:―


岡山県産「矢掛石」

堅牢な石質・穏やかな石目が特徴
様々な加工・用途に適した白色花崗岩

岡山県の南西部に位置する矢掛町は、江戸時代に旧山陽道の宿場町として栄えた地域であり、今も当時の面影を残す街並みを味わうことが出来る。中でも重要文化財に指定されている旧矢掛本陣・石井家住宅と旧矢掛脇本陣・高草家住宅は、参勤交代で往来する大名などが宿泊した場所としても知られており、多くの観光客が訪れている。

豊かな自然と歴史・文化が感じられる、この矢掛町で採掘されている「矢掛石」は白系の花崗岩で、主に墓石・外柵材として使用されている。堅牢な石質・穏やかな石目を特徴とし、白桜の花びらが風に舞うように感じられる色合いから「白桜みかげ」という商標登録もされている。

「矢掛石」採掘場の様子

現在、この「矢掛石」を採掘しているのは井上石材有限会社一社のみ。同社は昭和50年に「矢掛石」の採掘を始めて以来、自社工場での加工・製品卸へと業務を広げながら、取引先石材店のニーズに対応してきた。

同社の社長・井上太郎さんは、矢掛石を取り巻く市場の変遷を次のように話す。

「当社は私の父が創業した会社で、自分が入社したのが今から27年前。その当時、当社は採石・加工ともにフル稼働のような状態でした。矢掛石は主に墓石の延べ材として岡山を中心に中四国・関西エリアで多く使っていただいていました。

ところが、それから2年くらいたった後、中国製品の影響もあって急に注文が減ってしまった。このような市場の変化に合わせていくために、当社も中国製品を扱うようになり、矢掛石の需要は減少の一途をたどっていくことになりました」。

その後、同社の受注は中国製品の割合が多数を占めていくことになるが、矢掛石の採掘と自社工場で加工できる体制は維持し続けてきた。

「矢掛石」を切削している

「16年前に先代の父が亡くなりまして、そのタイミングで山を辞めるという選択肢もあったと思います。ただ、職人さんも頑張ってくれていましたし、自分にとって採石場は小さい頃から慣れ親しんだ場所。合理的に考えれば閉山という選択もありましたが、自分の生き方として、辞めようとは思わなかった。なんとか続けていくことが自分の使命ではないかと考えました」。

記者が取材させていただいたのが令和2年11月中旬。工場内では矢掛石を加工する機械の音が響いていた。以前に比べて中国製品の価格も上昇傾向にある中、同社ではこのところ矢掛石の受注割合も増えてきているという。

井上石材(有)の工場にて

井上さんは「矢掛石」の魅力として、石の質感・色合いと共に、価格的なメリットも挙げている。ものによっては中国製品とも競争できるとのことで、コストパフォーマンスの高さも大きな特徴になっているようだ。

同社には現在4名の職人がいる。4名ともに丁場での採掘+工場での加工も行なっているとのことで、幅広い業務に対応できる職人の存在も同社の大きな特徴だといえるだろう。

井上石材(有)井上太郎さん

 

井上石材有限会社

岡山県小田郡矢掛町内田769-1
TEL 0866-82-3235
https://is-mason.co.jp/

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