来待石(きまちいし)
◆ 採掘地・丁場
島根県八束郡宍道町来待地区
◆ 主な特徴
軟質で加工しやすく、古く1400~1500年くらい前より愛用されてきた素材。伝統的工芸品に指定されている出雲石灯ろうの原石として広く知られていますが、建築材としても人気がある素材です。
◆ 来待石の有名な使用例
―
来待石の岩質データ
分類:凝灰岩質砂岩
吸水率:―
硬度:―
日本人の感性に響く穏やかな色合い
切り出されたばかりの青みがかった色合いから、味わい深い茶褐色の表情など、その独特な風合いが人気の「来待石」。伝統的工芸品「出雲石灯ろう」等に幅広く使われ“山陰の銘石”として知られている。
島根県の県庁所在地・松江市の国道9号線を西へ進み、出雲市方面に車で30分ほど。蜆漁でも知られる宍道湖岸の風光明媚な景色を見ながら車を走らせると、沿道に来待石のいくつもの加工品展示場が現れ始め、産地に着いたことを教えてくれる。
来待石は灰褐色系の凝灰質砂岩で、砂岩特有の柔らかな表情が特徴。加工しやすいうえに耐火性が高く、古くは古墳時代に石棺や石室に使われたほか、石塔や石仏、建材、灯ろう、石臼、かまどなど、山陰地方を中心に、かなり広い範囲で使用されてきた。
中でも江戸時代の松江藩主・松平直政は、この来待石を「御止(おとめ)石」と命名。藩外への持ち出しを禁止したほど重要視していたといい、松江城下町をはじめとする松江周辺のいたるところで使用されている。
その後、来待石を使って加工した灯ろうが「出雲石灯ろう」として広く知られるようになり、昭和51年には通産省(通商産業省=現・経済産業省)から灯籠では伝統的工芸品の第1号に指定されている。以後、需要の高まりを受け、全国各地に出荷されるようになったほか、アメリカやヨーロッパにまで輸出されるほどの高い人気を見せるまでになった。
現在では主に灯ろうや彫刻、モニュメントなどに使用されているほか、来待石の特徴を活かして、趣向を凝らした石あかりや土木建築用などにも広く使われているという。
新しい製品でも独特の古色を感じさせ、苔が付きやすい風雅のある素材として親しまれている「来待石」。採掘場で切り出されたばかりの少し青味がかった原石は、岩盤にあった際に蓄積されていた水分が抜け、呼吸し始めると、錆色がかった茶褐色の、いわゆる「来待石」の色に変わっていく。
日本人の感性に響く、深味のある穏やかなその色合いと石肌は、他に代わる素材が見当たらない「来待石」ならではの特性。今も、その味わいを評価する声は高いものがある。
【来待石採掘元】
勝部石材採石
島根県松江市玉湯町林1473
TEL:0852-62-1476