内藤理恵子の「石のおもしろ見聞録」Vol.9 ~ミニチュア枯山水のススメ~

このご時勢、なかなか外出はできませんが、かといって自宅でのレクリエーションの選択肢も限られています。そこで、今回はとっておきの室内レクリエーションをご案内したいと思います。ズバリ「ミニチュア枯山水」のススメです。

 

私とミニチュア枯山水との出会い

ミニチュア枯山水と私の出合いは、ちょうど三年前、東京都青梅市にある川合玉堂美術館の売店でした。この美術館に枯山水庭園が併設されていることもあって、売店でミニチュア枯山水セットが販売されていたのでした。

川合玉堂美術館の枯山水庭園(筆者撮影)

しかし、当時は枯山水の心がまだ理解できず、そのミニチュア枯山水セットを購入しないまま帰途についてしまいました。枯山水は、ありとあらゆるジャンルのアート作品を観た後に、ようやく「これこそが究極の芸術なのでは⁈」とたどり着くような奥深いものですから、当時の私にはまだ早すぎたのです。

 

 

意外と柔軟な枯山水の思想

それからのちに、数々の素晴らしい石造物や石工さんとの出合いを経て、ようやく「枯山水の心」が少しずつ理解できてきて、「ああーあの時にミニチュアキットを買っておけばよかった!」と後悔するということになったのでした。

とはいえ、私は諦めませんでした。通信販売で「ミニチュア枯山水キット」が販売されているのを見つけ、さっそく注文して手元に届きました。しかし、やはりミニチュアとはいえ枯山水の思想を理解してからでなければ、制作することはできないだろう……とも思い、参考資料も探すことにしました。

『N H K 美の壷 枯山水』(N H K出版)によれば、枯山水は見る人の心を映すものなので、自由に見て良いそうで、川に見えたら川と見ていいし、海と見えたら海と見ても良いそうです。白砂がショートケーキに見えたら心の中のケーキがそこに現れているのでしょう。しかし、一方で「基本的な見方」もあるようで、一番大きい石を見つけて、そこから水の流れがはじまって、うねりながら渦(悟りの世界)に行き着くという物語を見立てれば良いようです。

枯山水の庭が盛んにつくられるようになったのは、室町時代後期からです。

なお、枯山水のスタイルの庭の成立には夢窓疎石(1275~1351年)という僧侶が関わっています。夢窓は庭を通じて禅の思想を表現したと言われています。

 

 

いよいよミニチュアの枯山水に挑戦

みどり屋和草(埼玉県熊谷市)から枯山水セットを取り寄せ、先ほどの枯山水の思想を意識しながら、実際に制作してみました。

「禅の庭デザインキット」
通信販売で購入が可能です。

まず白砂を箱の中に敷いて、説明書に載っていた「渦」「波」「市松模様」「島」の表現をレーキで作っていきます。

レーキ (レーキのみでもAmazonで注文可能です)

このミニチュア枯山水、難易度としては、「老若男女、誰にでもできるけれども、いざ完璧に作ろうとすると難しい点もある。深堀りすればするほどハマっていく」という感じです。つまり「開口は広いけれども、極め甲斐のあるレクリエーション」として、幅広い世代が楽しめます(祖母祖父と孫、親子などでも楽しめる)。

作っていくうちに素材がもし足りなくなる、もしくは「もっとこんな形の石があったらいいのにな」と思った場合は、ご自分で追加する石を探してもいいし、もしくは石材店で端材を分けてもらってもいいかなと思います。

ちなみに、私は、既製品のキットに、「石フリマ」で購入した鉱物を追加したことで、グッとオリジナルな雰囲気になりました。

手持ちの鉱物を加えてみました。

部屋に飾った様子。格調の高いインテリア製品に見えます。

 

自宅で過ごすことが長くなっている昨今、家の中でも、悟りとやすらぎを感じるひとときをぜひ味わってみてください。

ミニチュア枯山水のテキストもあります。
枡野俊明『心が整う 禅の庭づくり ミニ枯山水の世界』 家の光協会