彫刻家に聞く「石の魅力とは」Vol.9(宮地 豊氏)

この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京都・仙川にありますプラザ・ギャラリーで宮地豊さんにお話を聞かせてもらいました。

――石彫家の宮地 豊さんが考える「石の魅力」とは?

「石の魅力は加工のしにくさじゃないですかね。僕はしつこい人間なんですけど、しつこい自分にちゃんと付き合ってくれるのは石ぐらいしかいないんじゃないかな(笑)。加工しにくい素材だから面白いんで、粘土みたいに真っ直ぐなピシッとした塊や、金属みたいにピシャッと切った鉄板が出来るとしたら、あんまり面白くないと思うんですよね。当然のように四角く作ってもきちんと四角になってしまう感じですが、石はカッターでグズグズと四角く切っていくと形が違ったり鈍ったりするじゃないですか。そういった折り合いが面白いんだと思います。

石の魅力を一言でいうと、加工のしにくさです。あと自分がこうだと思ってここを立てて作りましょう、ここを前にして作りましょうと思ったりするじゃないですか。でもひっくり返して見たらこっちの方が良かったっていう、そういった意外な面を見せてくれることも多いですね。

造形大の時は、ひと通り色んな素材を経験してから木と鉄の作品を作った時もありましたが、木は軟らかい。カチッとした印象ではなくて軟らかい印象になってしまうのが嫌だったり、技術的にも逆目になったり削れなかったりするので好きではなかったです。

金属はちゃんと計算してやらないと上手く行かない感じで、石が一番相性が良かったし、石で作品を作っている先輩も多かったし、結果的に石が一番身近だったんです。全体のコンセプトはいつも石でやるから、石っぽいものを作ろうと思っています。

大げさに言うと、石材彫刻の可能性みたいな感じですが、今回の作品は割り戻しや板石を組み合わせて箱のようにした予感シリーズの作品。12年ぶりの展覧会なんですけど、中身は何だろうなぁって思って、なんとなく付けた作品名です。この中に何かあるんじゃないかなぁとか、こういうことが出来るんじゃないかなぁと思わせる可能性みたいなものを表現しました。

前から、中身、接点みたいなものをやっていたんですが、他の彫刻家の皆が量とか塊で作品を作っているから、薄いものというか、弱いものみたいな作品を作りたいと思っています。

張り石や鉄板の箱ものって無垢じゃないじゃないですか。だからなんとなく軽いような、「この中どうなっているんだろう」といった感じで、窓を作ってみたり、くり抜いたりして石の中身を見てみたくなるような作品にしました。あまり難しいことは考えていません。行き当たりばったりみたいなことが多いです(笑)」とおっしゃっていました。

黒御影石を使った予感シリーズの作品と宮地さん

宮地さんは1965年香川県生まれ。’88年東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻卒業、’90年同大学彫刻研究室修了。

個展は’94年スペース遊(神奈川)、2000年田中画廊(’02年も、東京)、グループ展は’86〜’99年新制作展(東京)、’94年第3回石のさとフェスティバル タダノ賞(香川)、’95年第2回大分アジア彫刻展優秀賞(’12年は入選、大分)、’97年第12回国民文化祭かがわ石のフェスティバル庵治町議会議長賞(香川)、’98、’99年日向現代彫刻展(宮崎)、’13年第25回UBEビエンナーレ入選(山口)等、受賞多数。
現在は東京造形大学の非常勤講師をしながら制作されています。