紀山石(きざんせき)
◆ 採掘地・丁場
福島県いわき市と平田村にまたがる上三坂地区
◆ 主な特徴
均一な細目の粒子が美しく、気品を備えた深みのある色合いが人気の花崗岩。高温多湿の日本風土において永年の風化にも耐える粘りを持った石質が特徴。長期的に安定生産を続けています。
◆ 紀山石の有名な使用例
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紀山石の岩質データ
分類:花崗岩
見掛け比重:2.658(t/m3)
吸水率:0.163(%)
圧縮強度:189(N/mm2)
シルクのような上品な目合いの銘石
「紀山石」は福島県いわき市と平田村にまたがる上三坂地区の芝山で採石されている白御影石である。東北や関東のみならず、北陸や関西など全国各地で広く使われている銘石だ。
この「紀山石」を現在採掘しているのは、山岡石材店株式会社(富山県高岡市)である。36年前に採掘が開始されたこの紀山石の丁場・採掘権を同社が昨年取得したのである。その理由などについて同社の山岡弘之社長にお話をうかがった。
「弊社では以前から紀山石を使っていました。シルクのような美しい目合いはお客様からの評判も良く、当社でも力を入れていた主力石種のひとつでした。紀山石の石目の美しさは一般の方にもわかります。特に北陸ではこのような花崗岩は採れませんから、大蔵山スタジオさんが採掘されていた時から原石を多く仕入れていました。そうした縁から採石場を引き継ぐことになったわけです。」
山岡社長は山岡石材工業㈱と山岡石材店㈱の2つの会社を経営しており、この2つの会社で採石・加工・卸・小売まで幅広く事業を展開している。売木石(長野県)や早渡石(福島県)などの採掘元として、これまでにも採石業について十分な経験を積んできている同社。富山県や石川県においては小売業をしているため、エンドユーザーからの反応をよく把握していることも強みといえるだろう。
「弊社で販売している墓石材は、国産材、インド材、中国材がそれぞれ3分の1という構成ですが、国産石種としては、庵治石、大島石、万成石などの次に来る銘柄が紀山石です。ここまできめ細かくてきれいな石目を持っている白御影石で、大材も採れて十分な埋蔵量があるという丁場は稀少だと思います。しかも歩留まりも良くてコストパフォーマンスに優れていますから、『この価格でこの品質』というのが紀山石の魅力だと感じています。」
これまでは紀山石の原石を買って加工・販売していた立場だったが、これからは採掘元として供給していく立場になった同社。加工する立場、販売する立場で紀山石の魅力を知り尽くしている同社だけに、山岡社長には紀山石のブランドを守っていきたいという強い想いがある。
「紀山石の品質を守っていくために、墓石用には特級材しか出しません。2級材、3級材のものについてはモニュメントや建築・土木関係の用途に回していけますから、無理をする必要もありません。また原石の出荷先を国内の卸会社さんだけに限定していますが、それも紀山石のブランド価値を崩したくないからです。」
石目を読む確かな目が 銘石のブランド力を保つ
紀山石の丁場は現在5名体制。以前からこの丁場で仕事をしていた職人の遠藤研一さんが引き続き親方として舵取りをしている。火薬による発破が現在はメインになっているが、ワイヤーソーを併用しての採石もこの丁場では行なわれており、将来的には平らな場所を作ってワイヤーソーをもっと活用していきたいとのことである。
「紀山石の山をよく知っている親方とは以前からの付き合いです。岩盤からどのように石を外すのがベストかは、石のキズを読む熟練した職人の目が頼りで、それにはやはり経験が必要です。今年の夏から本格的に採石を開始して、現在月間で五百才を出せるまでになってきました。月間一千才超を通常のペースにしたいと考えていますので、まだまだその半分ですが、生産量の落ちる冬場に山づくりをしながら、来年の春以降には一千才超のペースに持っていきたいと考えています」と山岡社長。
紀山石の丁場の岩盤は南北にキズが入っていることが多いという。それに対して東西に入るキズや水平に入るスクイを見極め、掘った穴に火薬をつめて発破をかける。どこに穴を掘り、どれだけの火薬をつめるかは、長年の経験に基づく勘が頼りだ。
また、岩盤から外れた大きな石のかたまりを大割にしたり、それをさらに小割にしたりする際にも、石の目を読み、石の癖を調べながら、セリ矢を適切な場所に差し込んでいく必要がある。
「原石出しは乱尺材を基本としていますが、場合によっては小割材にも対応しています。今は待っていただいている取引先の方に採った石を渡すことで精一杯ですが、来年以降は徐々にストックも増やしていきたいと思っています。」
丁場には見事な乱尺材がいくつも置かれていた。均一で美しい石目、青みを帯びた白く気品のある色合い、風雪に耐える経年劣化の少なさ、加工しやすい粘りのある石質。石肌に水をかけて検品する職人たちの真剣な眼差しからも、紀山石のブランドは現場の職人たちの目によって保たれていることを感じた取材でもあった。
◆山岡石材店㈱
富山県高岡市福岡町下老子733
TEL0766︱64︱3051
FAX 〃 5334