伊達冠石(だてかんむりいし)
◆ 採掘地・丁場
宮城県伊具郡丸森町
◆ 主な特徴
素朴で温かみが感じられる自然肌と鉄褐色の色合いを持つ艶やかな内面とのコントラストが特徴の安山岩。時とともに味わいを増す石質、上品なトラ目模様も特徴で、個性的な製品・作品も数多くつくられています。
◆ 伊達冠石の有名な使用例
ロサンゼルス・リトルトーキョー(日米文化コミュニティーセンター内)
伊達冠石の岩質データ
分類:安山岩
見掛け比重:2.87(t/m3)
吸水率:0.09(%)
圧縮強度:343(N/mm2)
個々の原石が持つ独特のフォルム・色合い
皮肌と磨き面とのコントラストも魅力
「伊達冠石」は宮城県南部の福島との県境近くにある丸森町で産出される石で、他の土地では見られない独特の色合いを持っている。両輝石玄武岩質安山岩に分類され、丸石の状態で採石されることが多く、墓石や記念碑、モニュメントなどとして、よく用いられている。
「伊達冠石」の皮肌(野面=のづら)は温かみのある茶色で、割って磨くと、内部の灰黒色の輝きが現れる。外側の明るい茶色と、内側のツヤのある落ち着いた灰黒色の対照の妙は、何とも言えない愛らしい趣が感じられる。
この「伊達冠石」の採石・加工を行なっている大蔵山スタジオ株式会社(宮城県丸森町)は、墓石や記念碑のみならず、アート・デザイン・建築の分野において国内外で活躍するクリエイターとの協業により、伊達冠石の新たな魅力と可能性を引き出した製品を世に送り出している。
採石場所では、伊達冠石ならではの趣深い岩肌が見られる。山の表層は土であるが、5mほど掘っていくと茶色い皮肌の玉石の層になるとのことで、その下の層に行くと黄色い皮の角張った塊になり、さらにその下は柱状節理になっているという。
柱状節理の層は風化が進んでいないそうで、岩盤の傷に水が入り込んで風化が進むと、角が取れて丸くなっていく。そうして伊達冠石特有の玉石が出来上がっていくとのこと。
伊達冠石といえば、茶色い皮肌を持つ玉石をそのまま活かした自然石の墓石がよく知られているが、そのフォルムと色合いは水の浸食など、自然の力によってつくられているのである。
伊達冠石の魅力のひとつは、皮肌と磨き面とのコントラストにある。皮肌の一部分だけをアクセントにした墓石も製作されているが、どの部分にどれだけの皮肌を残すのかを考えるためには、完成時のフォルムをいかにイメージするかが重要であり、そこから逆算して原石を加工していく緻密な計算が不可欠になる。
加工する職人には洗練された技術と優れたセンスが求められる。加工作業に取り組む職人の姿から、精神を集中している様子がうかがわれた。
大蔵山スタジオ株式会社
宮城県伊具郡丸森町大張大蔵字小倉10-1
TEL 0224-75-2105
https://okurayamastudio.co.jp/