十和田石(とわだいし)
◆ 採掘地・丁場
秋田県大館市比内町
◆ 主な特徴
大館市比内町より採掘される青灰色系の凝灰岩。軟質で保温性にも優れています。建築内装材、門柱、石塀などに使用されています。
◆ 十和田石の有名な使用例
ひない温泉ひないの湯、龍門亭千葉旅館、湯瀬ホテル等
十和田石の岩質データ
分類:凝灰岩
見掛け比重:2.19(t/m3)
吸水率:9.58%
圧縮強度:414(kgf/cm2)
秋田県産「十和田石」
やさしい色合いが魅力・独自のブランドを展開
十和田石は浴室に使われる石材として有名であるが、それには理由がある。
中野産業株式会社(本社=秋田県大館市)の採石業務管理者・金谷永臧氏にお話をうかがった。
中野産業株式会社が設立されたのは昭和55年で、当初は十和田石を門塀などに用いていたそうであるが、やがて浴槽・浴室の床材として使われるようになり、用途が定まっていったという。
「十和田石の特徴は、多孔質でよく呼吸をする石だという点です。つまり、空気や水分を吸収したり吐出したりしているわけです。多孔質であるため、肌触りがやさしく、保温機能も高いという利点があります。そして、多孔質であるために表面が水で濡れても膜ができないため、非常に滑りにくく、それが浴槽や浴室の床面に用いられている理由になっています」。
十和田石はグリーンとブルーの中間的なやさしい色合いの凝灰岩で、十和田湖に近い秋田県比内町で産出されている。十和田石の特徴として、防滑性(滑りにくさ)、保湿性、保温性が挙げられるほか、抗菌性、抑臭性もある。
「十和田石には遠赤外線放射機能があるため、蓄熱効果が高く効率よく室内を暖めてくれます。また、人間にとって害のある菌を吸着して分解するため、嫌な臭いを抑える効果もあります」と金谷氏。
バイオ素材としての用途も
十和田石の採石場は独特である。地上部から斜坑し、10mごとに柱を残す残柱式を採用している。坑内で電動チェーンソーによって四角く切り取られた石塊は、工場で規格のサイズにカットされ磨かれる。
同社では、いつでも即納できるようにと、常時ストックを補充し安定供給が図られている。浴槽・浴室に使われている十和田石であるが、最近は新たな用途が浮上してきたようである。
「十和田石を細かく砕きpH(ペーハー)を測ると弱アルカリ性を示します。そのため酸化を抑えて中性化させる効果があるわけですが、石がミネラルを放射して微生物を増殖させる環境を作ることがわかりました。石粉や石粒を土に混ぜて農業用のバイオ素材として使うと、作物の病気を抑えるとともに、成長を促進する効果があり、現在はこのバイオ素材としての用途にも力を注いでいます」。
秋田県の食のブランドとして、アキタコマチや比内地鶏が挙げられるが、十和田石による土壌改良や環境浄化が農業や酪農にも活かされ始めているようだ。食のブランドと石のブランドが相互に補い合う方向性に期待が高まっているようである。
■中野産業株式会社
秋田県大館市比内町中野字下籾内38
TEL:0186-56-2514
https://towadaishi.jp/