銘店“石屋”シリーズ  有限会社 岡本石材(香川県高松市牟礼町)

お客様の声にしっかりと耳を傾け、一つひとつ丁寧な仕事・対応を心がけています。

日本の三大石材産地のひとつ、香川県高松市の牟礼町に工場・店舗を構える有限会社岡本石材は昭和35年に創業。優れた加工技術と丁寧な仕事ぶりが評価され、全国各地の石材店から寄せられる墓石の加工受注に対応しながら、エンドユーザーに向けた墓石の提案・販売・施工において高い実績を持っています。同社二代目の岡本俊之さんに、お話をうかがいました。

岡本俊之さんと奥さまの岡本嘉津子さん

岡本俊之さん(昭和38年生まれ)
創業者である父・岡本實さんの後を継ぎ、お墓に関する幅広い仕事に対応。お客様の満足度と共に、自分自身の技術・知識を高める努力を怠らず、様々な資格(福禄寿会建墓建塔造塔学博士・全優石認定お墓相談員・お墓ディレクター1級など)も取得。石を活かした多彩なものづくり、お客様の想いをカタチにするお墓づくりにも力を注いでいます。

―はじめに御社の創業について教えてください。

岡本 牟礼町で生まれ育った初代の父は6人兄弟の長男ということもあって、中学を出て「すぐに働かなくては」と考えた就職先が、手に職を付けられる石屋さんでした。自宅近くの石屋さんで6年、別の石屋さんで2年ほど修業していた中で、親方である始めの石屋さんから「事業を閉じるので、取引先を継がないか」と声をかけてもらい、独立することに。それが岡本石材の始まりです。
当時、父はまだ20代でしたが、それまでの8年間で習得してきた技術を活かし、墓石の加工をメインとした工場として創業。以来、当社では墓石の加工・販売・施工を中心に仕事をしています。

―岡本さんが家業へ就いた経緯を教えてください。

岡本 小さい頃から我が家が仕事場だったので、父の仕事をよく見ていました。長男だったこともあり、自然と「石屋をやるんだな」と思って育ってきました。高校3年の時に、そのまま家業へ入ろうかと考えていたのですが、姉から「大学へ行った方が良い」とアドバイスをもらい、父の許可も得て大学へと。
その後、卒業と同時に石屋になるつもりでいたのですが、4年生になって周りが就職活動をしているのを見ながら「石屋になる前に別の仕事を経験してみることも大切ではないか」と思うようになり、「後悔したくない」という気持ちもあって、総合商社へ就職することを決めました。
この会社の不動産部で社会人としてのイロハを教えていただきました。営業担当だったのですが、毎日不動産について勉強しながら、どうしたらお客様から信用される営業マンになれるかを常に考え、試行錯誤を重ねていたことを、今でもよく覚えています。
その後、その会社で責任のあるポジションを用意いただけるという話を頂戴したのですが、そこへ足を踏み入れると石屋になるタイミングを失ってしまうと思い、上司にも納得いただいた上で、家業へ就くことを決めました。

―石の仕事はどのようにして覚えていったのでしょうか。

岡本 高校・大学時代、休みの日などに手伝いをしていたので、何となくの作業はわかっていたのですが、本格的に仕事をするとなると、責任の度合いも変わってきます。原石の状態から製品へと加工していく中で、もし途中で石を壊してしまったら、それまでの苦労は水の泡となってしまいます。また、石は自然のものですので、切って見たらスジや模様が入っていたりして、使えないものが出てくるケースも少なくありません。
そのような石の見分け方や活かし方を覚えていくのは経験を積んでいくしかなく、毎日のように職人さんに付いて学んでいきました。石と向き合う日々を重ねていく中で、徐々に原石を見る目も養われていき、責任のある仕事も父から自分へバトンタッチしていただけるようになっていきました。

有限会社岡本石材が手がけた建墓事例

―ここで少しプライベートな質問として、岡本さんの趣味や特技について教えてください。

岡本 小学6年の時から今も続けている剣道ですね。40歳の時に七段になることができ、今は八段(合格率0.5%)を目指し、仕事後や休みの日などに稽古へ通っています。
剣道で学んだことは、言葉では言い尽くせないほどたくさんあります。精神力や集中力が養われ、自分自身の腕を磨きながらも、常に相手への敬意を忘れない。人としての生き方を学べる、本当に素晴らしい武道だと思っています。ちなみに2人の息子も高校、大学まで剣道をやっていて、親子で生涯、剣道を続けていくことができたら嬉しいですね。

―岡本さんにとって人生のターニングポイントとは?

岡本 いろいろとありますが、一つは総合商社での営業経験だと思います。不動産部の仕事は、お客様のご家庭のことなど、様々な事情が絡んできます。そういった背景も踏まえながら、お客様の人生にとってより良い提案をすることを心がけていましたが、このことは、お墓の仕事に通じる部分も多く、今にも大いに活かされていることを実感しています。
もう一つは、地元の祭りで総代長を務めたことです。この祭りは地元の一大イベントで、地域の方たちが協力し合って太鼓台(ちょうさ)を地域を練り歩きながら、神社へ奉納するもの。祭りに関わる全員が力を合わせないと成し得ないもので、人と人との繋がりの大切さ、地域の方たちの温かさを身をもって経験し、総代長をやりきった時は、この町に生まれて本当に良かったと思った瞬間でもありました。
そこでの達成感が、その後の地域活動へ参加するモチベーションとなり、人が楽しんでくれること・喜んでくれることが自分の生きがいにも感じられるようになってきました。「むれ源平 石あかりロード」に長く関わっているのも、この祭りでの経験が大きな原動力となっています。

岡本さんは「むれ源平 石あかりロード」の名ガイド役としても知られています!

―お墓づくりを進める上で、心がけていることを教えてください。

岡本 当社の加工技術を活かして、質の良い、間違いのない墓石をつくること。そして、お客様が安心・納得してお墓づくりを進められるように、ほんの少しでも不安や疑問に思うことにしっかりと耳を傾けて、丁寧に説明・対応することを心がけています。
お墓づくりは一生に一度ともいわれるもの。お客様からすると、わからないことも多くあるはずです。そのような大切なお墓づくりに向き合う上で、お客様からの質問に「わからない」ということがあってはなりません。そのために、今もお墓の勉強会へ定期的に参加し、プロとしての知識を高めるように努力しています。

―最後に今後の目標を教えてください。

岡本 私どもの会社は、日本を代表する銘石「庵治石」が採れる町にあり、地元の多くの石屋さんと地域の方たちに支えられて、今があると思っています。このご恩に報いるためにも、地元の方たちから信頼され続ける会社になれるよう、これからも精進していきます。
また、お墓づくりを通して多くの方に幸せになっていただきたいという想いも強く、一つひとつ丁寧な仕事・対応を徹底しながら、「お墓を建てて本当に良かった」と感じていただけるお客様が一人でも多く増えていくように、『幸せのお墓づくり』を心がけて、努力していきたいと思っています。

 

有限会社 岡本石材

所在地:香川県高松市牟礼町牟礼2510-5
TEL:087-845-2724/FAX:087-845-2817
ホームページ:https://okamoto-sekizai.com

いしマガ取材メモ

高松市の夏の風物詩といえるイベント「むれ源平 石あかりロード」の実行委員長を長く務め、ロード上にならぶ石あかりの名ガイド役としても知られる岡本さん。数人の参加者でガイドをスタートしても、ユーモアを交えた語りの面白さにつられ、気が付けば数十人もの集団になっていることも。お客様からも「何でも聞きやすい」と言われることが多いそうで、取材時も、笑顔で気さくに対応いただける姿が印象的でした。岡本さんの奥さま(嘉津子さん)と職人さんの人柄の良さ、アットホームな雰囲気も岡本石材の大きな特徴。お墓づくりを考える際には、ぜひお話を聞いてみてはいかがでしょうか。