楽しい石入門 11時間目「岩石の水素や酸素が水になるとき」

地球の水と空気は岩石からつくられた

記者 先生、本日は岩石と水をテーマにした2回目です!

先生 今回は、もともと岩石の内部に含まれている酸素や水素が、どのようにして水となり、外部に出てきたか?そのあたりのことをお話していきたいと思います。

記者 はい、よろしくお願いいたします!

先生 さっそくですが、まず代表的な例として挙げられるのは、火山ガスの放出ですね。これは前回の連載でも触れさせていただいたことですが、火山が噴火するときにシャンパンみたいな泡ができるんです。その泡のかなりの部分が、実は水蒸気。つまり、マグマの内部にあった酸素と水素による化合物なんです。

記者 なるほど岩石の元となるマグマから、水素と酸素が分離するんですね!

先生 もちろん、マグマに含まれている水素や酸素がどの段階で分離するかは、急冷かどうか、あるいは圧力がどれくらいかかっているか?そういったさまざまな条件によって変わってきますし、あるいは噴火とは関係なく、シューシューと噴気だけの活動を続ける火山もありますけどね。ともかく、それが地球の水になっているのは間違いありません。

記者 地球の水になっている!?

先生 そうなんです。宇宙を漂うチリから地球ができたのは、およそ46億年前。当時は、地球に今ほど多くの水はなかったといわれています。
では、その水はいったいどこからきたのか?そのような疑問を突き詰めていくと、答えの一つが岩石にたどり着くんです。

記者 そうなんですか!

先生 さらに付け加えるなら、地球の空気も、最初は岩石の中から出てきたものでもあるんですよ。

記者 水だけでなく、空気までほんとですか?

先生 ええ。地球には最初から大気の層があったわけではないんです。地球外から彗星に運ばれてきたものもあるでしょうし、チリが固まってできた岩石から窒素や二酸化炭素などの揮発性物質(液体や気体になりやすい物質)が吐き出されて、大気と水蒸気の膜ができたともいわれているんです。

記者 まさか、地球の水と大気が、実は岩石と関係があったとは・・・。う~む、それはすごいお話ですね!

ホワイトボードでわかりやすく説明する乾先生

 

変成作用で出た水が火山をつくる!?

先生 そしてもう一つ、火山ガスによって放出されなかった水素や酸素は、冷えて固まった鉱物の中に閉じ込められて、岩石の中に残ります。その岩石から酸素や水素が出てくる原因としては、変成作用というものが挙げられます。
以前に、変成岩という岩石の種類についてお話したのをおぼえていますか?

記者 おぼえてます。え~っと確か、変成岩というのは、温度や圧力によって変成した岩石のことでしたよね。

先生 ええ。そうした変成作用というのは、数千万年という長い時間の中で起こります。そのときの化学反応として、水素や酸素が余るような反応が起こると、水となって外部に出てくることがあるんです。

記者 水にとっては、外に出られる再チャンスというわけですね(笑)。

先生 チャンスという表現が適切かどうかは、ちょっとわかりませんけど(笑)。ちなみに、変成作用と呼んでいるのは地上からの深さが10~100㎞くらいで起こるもの。地球規模で見れば、ほぼ地表で起きている現象といえるでしょうね。

記者 なるほど~。

先生 さらに、水は出ていくだけではありません。地表や海底に堆積している鉱物が、水と反応して「OH」を含む鉱物に変わることもあるんです。ですから、水は岩石から出たり入ったり、循環しているものだともいえるんです。
そして面白いことに、変成作用で外部に出てきた水は、地球に火山ができる原因の一つにもなっているんですよ。

記者 えっ、それはどういうことですか!?

先生 簡単にいうと、地下で変成作用が起こって水が出てくると、その周囲の岩石の融点が下がっていくんです。つまり、岩石が溶けやすくなるということです。そして、その溶けた岩石が周囲の岩石よりわずかに軽くなることで、浮力によって地表まで上がってくる。それが火山になるというわけです。

記者 ということは、岩石の中からたくさんの水が出てくるほど、火山ができやすくなるというわけですか!

先生 そういうことなんです。ちなみに日本に火山が多いのも、そういった理由からだといわれているんですよ。

 

岩石と水と火山の関係

記者 なるほど・・・。岩石と水、そして火山には、そういった相関関係もあるんですね!

先生 ただし、火山になるといっても、すべてがいわゆる山になるわけではありませんよ。

記者 えっ、山にならない・・・って、どういうことですか?

先生 地形的な意味で、山になると決まっているのではないということです。つまり、マグマが地表に出てくれば、それが火山であるという定義になるんです。わかりやすくいうと、たとえばカルデラみたいに凹んでいる状態でも、あれは火山と呼ばれていますよね。

記者 なるほど、そういうことですね!

先生 以上が、岩石から水が出てくるときの代表的な例になります。ただ、あくまでも一番大きな原因は、シャンパンみたいに発泡して出てくるパターン。つまり、火山ガスだと思います。

記者 う~む。岩石の中に入っている水素や酸素が、さまざまな自然の作用によって水になる…。考えてみると、なんだか不思議なものですね。

先生 では、今回はここまでにしておきましょう。
次はいよいよ、岩石の中でも花崗岩にお話を絞って、水との関係について解説していく予定です。

記者 花崗岩!それは次回もすごく楽しみです。先生、今回もありがとうございました!

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