彫刻家に聞く「石の魅力とは」vol.42(四家真理子氏)
この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・神田にありますギャラリーf分の1で開催された四家真理子さんの個展でお話を聞かせてもらいました。
「石は素材自体がものを言う、じゃないですけど、素材自体の強さがありますよね。でも、ものを作る身としてはそれに頼るというか、寄りかかる形ではいけないと思っているんですけど、反対に勝とうとか負かしてやろうっていうのも違う気がしてて。素材が持っているものと自分が作りたいものをうまい具合に一緒に出来ないかなって常に思っています。
私にとっては完全になんでも自由自在に言うことを聞く素材よりも、なかなか難しく厄介なところを抱えた石のほうが魅力的に感じるってところがあるんですね。
多摩美時代の学生の時は制作してもなかなか形にならないんですよ。それこそセットウも振れないような感じだったんですけど、実習の終わり際に自分のやりたい形が見えてきて、満足のいくような形が出来たんです。今まで言うことを聞かなかったぶん、達成感があって嬉しかった。この素材をもう少しちゃんと扱えるようになりたいって思ったのと、苦労したぶん出来上がった時の嬉しさが面白いと思ったんですね。
石の作品は一つ形になるのに時間が掛かるので、もう一つ別の素材で早く作れるものを持っていたほうが良いのではと、色々と考えたりもしたのですが、結果的に形として作品になるのは石しかなかったので、ある意味、石しか出来ないんじゃないのかなって気がしています。
私の中で作品づくりと石が強く結び付いちゃっているので、今度は他の素材に移した時にどうするって戸惑ってしまう感じなんですね。素材を変えちゃうと別の思考回路になっちゃうっていうか、単純に作品を作ります、それは石でも木でも粘土でも何でも一緒です、という感じにはならずに、やっぱり石がまず在ってっていうのがあります。
いろんな素材に挑戦したいなっていう気持ちはあるんですけど、石を彫るように他の素材で作品を作るのが上手く結び付かない感じがして、今のところは石以外の素材を使っていないですね。
あとは単純に思ったように石を彫れるようになりたいって気持ちが強いんですよ。技術が上手くなるっていうよりは、こうしたいと思うことが出来るようになりたいっていうのかな。知識や技術もなければいけないと思うのですが、そういったこととは別に、石の作品をコンスタントに作っていかないと分からないこともあるだろうなって思ったりもしています。
コンセプトは同じようなかたちの集合体、片方は上へと向かい、もう片方は下へと向かって、上のものを支えるような形を作っています。日々の懸命な営みは、たくましく美しい。その反面、摩擦が起こることもある。営みにより生じたエネルギーが形になったなら、という感じで制作しています。
紙って螺旋状に切るとビヨーンと伸びるじゃないですか。それでまた一枚の紙に戻るような感じ。もとは一つだった、一つに収まるような形っていうのを想像が出来るような形にしたいなと。そういったことを石でやりたくて制作し始めたのですが、そこから発展していった形の面白さを追っていったり、いろいろと考えてやっています。
ノミ仕上げの作品が多いのは、石本来の荒々しさを活かすためなのですが、磨きの仕事でしっかりと形が出せるほど自分が形を追えていないからなのかもしれません。
わりと上の面と横の面がはっきりとした形なんですけれども、ノミで叩くとちょっとあやふやな部分が出るというか、輪郭線がはっきりしなくなるっていうか、そういったような感じがすごく好きなんですね。でもノミ仕上げの作品ばかり作っているということは、ノミが好きなんでしょうね」。