内藤理恵子の「石のおもしろ見聞録」Vol.8 ~547万再生!石割り系ユーチューバーとは~
増える石材系ユーチューバー
昨年あたりから、石材業界人が続々とユーチューバーデビューされました。
そこで早速石材系ユーチューバーの「先駆者」を探し、成功者にインタビューをしてきました。ここでの「成功者」とはどのような基準か?とまず申しますと、「再生回数が多い!」「たくさんの人がその番組を見ている」という非常にわかりやすいものです。
では、まずは動画を観ていただきたいので、この動画にアクセスしてみてください!
現在(2020年2月)の時点で、なんと再生数は547万再生を超えています。↓
圧倒的に強い石割り系ユーチューバーにインタビュー
なぜこんなにも多く再生されているのか?
その謎を探るべく、有限会社中根石材(愛知県岡崎市滝町)の中根浩司社長にその秘密をお伺いしました。
「きっかけは2017年、岡崎市の観光課のW E Bサイト『岡崎ルネサンス』内の「岡崎まちものがたり」の担当記者がうちの石切場を取材してくれたんですが、その際、『ぜひ石割りの動画も載せたいが、市のサイトに動画を載せることができないので、中根さんが YouTubeのアカウントを取得して動画を配信し、それにリンクを貼って記事にしたい』と言われたことです。
その通りに、 YouTubeに動画を載せました。過去に撮影した発破の動画も出してきて載せたのです。つまり YouTubeで話題になりたいとか、広告収入を得たいという気持ちは一切なく(現在も広告の契約はしていない)、いわば流れでこうなった訳ですが、転機が訪れたのは昨年、「1000㎎」という動画の「まとめサイト」に掲載されたことです。それまでは1日あたり100再生くらいだったものが、いきなり1日で55万再生という日もあり、驚きました。ロシア、ベトナム、インド、インドネシアなどでも再生されていて、コメントが寄せられることもありました。岡崎の他の石材店さんが取材された時に、発破の動画を提供したこともあり、T Vでも放映されました。
結果的に再生数は伸びましたが、『自分がこれまでしてきた仕事を後世に残したい』という気持ちが強いので、これからも広告などは入れないと思います」とのことでした。
中根さんの動画を観ると「漢の背中で仕事を語る系」のありのままの動画が YouTube鑑賞者の心をつかんでいるようにも思えました。
石材系ユーチューバーは多様化している
他にも石材系ユーチューバーは多様化しており、ここで整理してみたいと思います。
まずは、愛知県岡崎市稲熊町の有限会社ストーン上一の上野孝一社長。
上野社長は6年前から YouTubeの配信を始めています。動画の内容は、上野社長がまるでジャパネットタカタの社長のように商品を説明していくスタイルで、その中でも再生回数が多かった傘立ての紹介動画では、ご自身で製作された商品の良さを自分で説明するという斬新なスタイル。「刃の跡をそのまま残してみた」「風が吹いても倒れない」など端的に商品の良さを歯切れの良い口調で説明されると、購買意欲が掻き立てられます。薪販売の情報など地域の人たちに有益な情報も配信されていました。
また、「石割り系動画」はストーン上一のチャンネルでも人気で、現在180万再生。
ぜひご覧ください。↓
次は情報番組系お墓ユーチューバー中野良一さんについて。
石の表面仕上げの紹介から業界裏話までバラエティに富んでおり、中にはブログ経由で寄せられた質問に回答する形でお話されていて、まるでラジオ番組のパーソナリティーのような「落ち着いた、こなれ感のあるトーク」が特徴です。特に、面白い放送回は「対談回」。吉澤石材店(神奈川県川崎市)の吉澤社長をゲストにして「Z O O M」というソフトを使って遠隔で対談した様子を録画、それをさらに編集して放送した番組です。思わずクリックしたくなるタイトルの回もあって、テロップやイメージ映像の使い方もテレビの情報番組のクオリティ。日々研鑽を積み動画の質が上がっていく注目株です。
ちなみに中野さんの「業界あるある裏話」などは、一般視聴者だけではなく業界人の注目を集めています。
なお私が、最近注目しているのは女性ユーチューバーの参戦です。
三上石材(岐阜県中津川市)の「おかみさん」として三上茜さんが「女将修行中」という動画シリーズを制作していらっしゃるのです。
特徴としては「ほっこりした手作り動画感」を残しながら、うまく編集されていて(長時間かかる作業は4倍速で見せたりしている)「三分間クッキング」のような雰囲気で石の製品が出来上がっていくのを見ることができます。音楽の使い方も石の作業の音とマッチして「癒し効果」が感じられます。特に「ネコのメモリアルストーン」は動画を配信したことによって、実際に販売につながったこともあるそうで、動画制作による販売の新しい可能性が提示されたように思います。
三上茜さんにインタビューしたところ「夫に勧められてチャレンジしてみることにしました。お客さんは、石の製品がどのように作られていくのかを見る機会がほぼないので、動画を見たお客さんからは『こんなに大変なの?』って言われます。石屋さんの大変さがわかってもらえたという意味では成功かな、と思います」とのこと。
それぞれに目的がある
石割り系、情報番組系、ジャパネットタカタスタイル、修行系と多様化する石材系ユーチューバーたち。それぞれに個性も目的も目標も違っています。
このような多様な広がりが相乗効果を生んで、石製品に対する一般からの印象もじわじわ変わっていくのではないでしょうか。私はそこに新たな希望を感じました。