楽しい石入門 4時間目「火山岩と深成岩の違い①」
火山岩と深成岩の違い ~見た目の違いは 結晶の大きさ~
記者 先生、今日もよろしくお願いします
先生 今回のテーマは「火山岩と深成岩の違い」について。前々回の2時間目でも少しだけ説明しましたが、さらに内容を掘り下げていけたらいいなと思います。
記者 先日の先生のお話にもあったように、大きく分類すれば、どちらも同じ火成岩なんですよね。
先生 そうなんです。とはいいましても、火山岩と深成岩は、見た目からもその違いが明らかなんですよ。
記者 ええ、おぼえていますあのときは花崗岩の標本を見せていただきましたが、火山岩に比べて白や黒の粒々が大きかったですよね。
先生 その粒々というのは、つまりは結晶のことですね。典型的な深成岩というと、花崗岩や斑れい岩が挙げられると思いますが、どちらも結晶と結晶が非常に緻密に組み合わさっています。 一方の火山岩は、粒こそあるものの、粒と粒のあいだが離れていて隙間が多い。例えば、日本でもっとも多い火山岩は安山岩ですけれど、粒々になっていない部分が目立ちますよね。
記者 なるほど。全部が粒々か、それとも粒々じゃない部分も含まれているか。そこが見分け方の大きなポイントになってくるんですね。
先生 ただし、粒々ではない部分というのも、あくまでも肉眼で見たレベルのお話ですけどね。
記者 えっ、どういうことですか?
先生 顕微鏡を使ってみると、火山岩の粒と粒とのあいだの隙間も、すべてが微小な粒。すなわち結晶であることが多いのです。
記者 ということは…、目に見えない小さな結晶のあるものが火山岩。肉眼で見える大きさの結晶で出来ているものが深成岩。そんな感じの理解でいいんですか?
先生 そうですね。基本的にはそのような考え方で問題ないと思います。
冷えるまでの時間の長さが鍵
記者 では先生、結晶の大きさの違いというのは、どういった理由で生じているんですか? 先生 火成岩はマグマが冷えて固まったものだというお話をおぼえていますか?
記者 もちろんです
先生 そのときの冷えて固まるまでの時間の長さが、結晶の大きさに関係しているのです。
記者 固まるまでの時間の長さ…。 先生 ごく簡単にいいますと、噴火によって地上に出てきたマグマが冷えたものを溶岩といいますね。ちなみに溶岩は代表的な火山岩の一つですけれど、地上の空気に触れて、一気に急冷されるわけです。そうすると、どろどろの液体だったマグマの中で、結晶の核が無数にできて、一つひとつの結晶が大きく成長する前に固まって石になってしまう。それらの一つひとつが、目に見えないような細かい結晶になっているのです。 ちなみに、そのような急冷の極端な例が黒曜石ですね。
記者 黒曜石っていうと…、あのピカピカ光ってる黒い石ですか。
先生 そのとおり。割ると非常に鋭い破断面ができますから、石器時代には矢じりやナイフとして重宝されたことでも有名ですね。
記者 あれも火山岩の一種なんですか。
先生 そうなのですが、ただし黒曜石には結晶がありません。なぜなら、あまりに急冷過ぎて、結晶ができる前に固まってしまったから。
記者 それはまたとんでもない早さの急冷ですね。
先生 もちろんマグマの化学組成によっても違ってきますから、実際には冷えるまでの早さだけが問題ではないですけどね。ただ、結晶ができていないから透明感があるわけで、これはまさにガラスと一緒です。
ゆっくり固まると 結晶が大きく育つ
記者 ところで鋭い断面の火成岩っていうと、安山岩のことも気になります。石って断層とか玉になっているものも多いと思いますが、安山岩である本小松石の産地などに行くと、鋭い断面の箇所も見られますよね。
先生 安山岩の場合は、地上に流れ出た溶岩が固まった火山岩なので、そのときの冷え方が関係していると思いますよ。外側から冷えていくときに、どういう風に冷えていったのか?あるいは地中でなにが起こっていたのか?などですね。 ただ、安山岩に関しては多くの方が研究をされていますけど、すべてのことがわかっているわけではないんです。
記者 そうなんですか。ではすみません、話が脱線しましたが元に戻します。火山岩が急冷された石であるのに対して、深成岩というのは?
先生 地下の深いところで、マグマがすごくゆっくりと冷えて固まった石。そういう言い方ができると思います。 記者 まさに急冷の対極なんですね。
先生 そうなんです。ゆっくり冷えていくということは、結晶の核がつくられる動機が少ない。そのために、核がそれほどたくさんはできなくて、一つひとつの核が時間をかけて成長していくことができるんです。
記者 なるほど、だから花崗岩や斑れい岩は、肉眼でも見えるような大きさの結晶になっているんですね
先生 ええ。このことが火山岩と深成岩の大きな違いだと思います。
記者 いや~、今回もすごくわかりやすくて面白かったです
先生 では、本日はこのあたりで終わりにしましょう。次回も楽しみにしていてくださいね。