山田真喜子の「イタリア石風景」Vol.1~ロータリーに見る石の見事な活用術~

交差点の中央に設けた円形帯。車が交通規制に沿って回るという“ロータリー”が導入されたのは米国からとのこと。イタリアでは1989年から徐々にイタリア自動車道路公団(ANAS)と地方行政機関の許可のもとに設置が進められてきたそうです。欧州連盟が安全通行のための振興策として打ち出しているものでもあり、徐行による交通安全対策と信号機材を必要としないこともあり、このようなロータリーは現在も増加傾向にあるようです。

この北イタリアの街(ヴェネツィア・ジュリア自治州)にある小さなロータリー。2010年に作られたもので、第一に機能性があり、石の美観も守られています。特筆すべきは、中央にある石モザイクで作られた絵の表現力!このロータリーが献血団体の協力もあって作られたこともあり、中央の絵は献血協力50年をイメージして絵画化されたものです。

このモザイク画を作ったサルヴァドーレさんによると、ロータリーの外枠に使われているピンコロ(小さな四角い石)はポルフィド(斑岩)を使用。内枠には砂利に低い植木があり、中心にはイタリア産大理石として有名な「ビアンコ・カラーラ」で作られた石板が3つ。その中央に石のモザイク画が施されています。バックにある教会との景観のバランス、また、3面を柱型の石で作られていることなど、一見、どこにでもありそうな街の風景かもしれませんが、石の活かし方・表現へのこだわりが感じられるのは、イタリアならではかもしれません。

なお、ロータリーの外側に使われているピンコロは欧州の各地で見られるもので、その多くがイタリア・トレンティノ州のものだそうです。また補足ですが、この北イタリアの街から70㎞離れた地点に世界中から生徒が集まる欧州最古のモザイク学校もあり、そういった石を活かせる教育環境が整っていることも、石の都としてイタリアが世界中から広く知られる由縁なのでしょうね。

筆者=山田真喜子(イタリア在住)