内藤理恵子の「石のおもしろ見聞録」Vol.1 ~石仏のサブカル的な面白さ~
石仏のサブカル的な面白さ
突然ですが、今年8月、私は、日本石仏協会に入会しました。どうして、石仏協会のメンバーに?話せば、長い話になります。
きっかけは2年前。道端で「不思議な石の彫刻」に遭遇しました。それをツイッターで流してみたところ「これは馬頭観音の石仏なのではないか」ということになり、さらに「そもそも馬頭観音とは何か」という議論が巻き起こりました。
ある真言宗のお坊さんは「馬が水を飲み干す様に、煩悩を吸い尽くすためにヒンズー教のヴィシュヌの化身が、仏教(密教)に取り入れられた」と説き、ある学芸員さんは「三叉路の守り神とされて、街角に石仏の馬頭観音さんが祀られてます」と語り、ある漫画家さんは「うちの地元では馬の供養のために馬頭観音が建立された」と教えてくれました。ちなみに、私はペット供養の寺院で、馬頭観音がお祀りされているのを見たことがあります。
つまり、馬頭観音は地域や、お参りする人によって意味が変わるようなのです。元々はインドの神様が、密教を通じて日本に渡り、それが石仏に彫られると「三叉路の守り神」や「馬の供養のため」といった違う意味合いに変化していく。ここに面白さがあるのです。
私の石仏歴のターニングポイントは昨年の5月。静岡県の藤枝市にある佐野石材の佐野社長が企画した石仏ツアー(藤枝おんぱく〜藤枝温故知新博覧会〜の中で開催された石仏巡礼ツアー)に参加したことです。藤枝市周辺は馬頭観音の聖地で(かつて藤枝市周辺は宿場町で、馬がたくさん使役されていたため)そこで、浴びるほど馬頭観音の石仏を見ました。
そして、ここでも石仏に関する「面白い話」を聞きました。如意輪観音の石仏は「虫歯を治してくれる」という独自の信仰に繋がっているそうなのです。そういえば、如意輪観音のお姿は、パッと見、虫歯を押さえいているポーズをしているように見えなくもありません。そんなエピソードを聞くと、「石仏のサブカル的なおおらかさ」の虜になります。宗教と民俗の狭間にある「オモシロイ存在」としての石仏。そのユルい感じがイイのです!
そこから私の石仏への情熱に火がつき、今年の7月に、一年間かけて調べた「庚申信仰」の記事(庚申信仰を調べていたら、こんにゃくが関係していたことがわかり、それをまとめた記事が日本石材工業新聞に掲載されました。その記事がきっかけで、石仏協会の公開講座へのお誘いを受けました。
今年8月、その公開講座にうかがったのですが、衝撃的だったのは同時開催の写真展でした。
「セーラー服石仏(イラスト参照)」
「猫神石仏」
「幽霊を調伏する親鸞の石仏」などインパクトの強い石仏に多数出合い、これまでの私の石仏の知識がいかに狭いものであったのかを、思い知らされたのです。(詳細は日本石材工業新聞本紙の連載「墓石業界見聞録」をお読みください)
その後、石仏協会の先輩に「三重県菰野町の五百羅漢を見れば、石仏入門は大体OKだから行くように」というアドバイスを受け、9月に入ってから参拝に行ってきたのですが、そこで観た石仏群の自由なこと……!(詳しくは、日本石材工業新聞本紙の墓石業界見聞録をお読みください)
石仏は、もっともっと自由でいい!いつかマイ石仏を建てる!そんなことを意気込んでいるこの頃です。